借主に理があっても敷金の取り戻しは難しいこともある
民法改正の報道を受けて、敷金の返還請求に関する話題がいくつも出ていました。
東京新聞:敷金返還ルール明記 法務省「約款」も民法で定義:経済(TOKYO Web)
現状の賃貸における敷金の扱いには不条理なところが多く、経年劣化による損傷もさることながら、汚れてもいない壁紙の張り替えが行われたなどの理不尽な請求も少なくありません。
ひどいときには敷金を返還されるどころか、敷金以上の金額を要求されたなどという話しも散見します。
敷金を取り戻す記事はとても有意義ですし、法律上も借主を保護しています。
つまり理は借主側にあります。
ですが、だからといって、それで簡単に敷金が還ってくるわけではないのが難しいところです。
無理が通れば道理は引っ込むというか、理不尽な請求をしてくる大家や管理会社ほど遵法意識が低く、請求する側にも覚悟が必要です。
法的手段を用いても必ずしも簡単ではない
敷金の返還請求としては、内容証明→少額訴訟という流れが、法的な手段で考えれば順当です。
よくある敷金の返還テクニック的な記事でもこんな感じで紹介されています。
とはいえ、まっとうな手段でお金を取り返すというのは、実のところかなり骨の折れる仕事であり、場合によっては足が出ることも少なくありません。
たいていの場合、労力に見合っただけの見返りがなく終わってしまいます。
内容証明を書くこと自体はそう難しくありません。ネット上にはフォーマットを公開されているところもあります。
料金も最低1,252円で済みます。
これで返還してくれれば問題ないのですが、内容証明には法的拘束力はなにもありませんので、ちょっと法律をかじった相手には無視や反論される場合もあります。
そこで次の手段として争う金額が60万円以下なら少額訴訟があげられます。
裁判所に行き係の人に聞けば、よほど不親切な人でない限り詳しく教えてくれるので、慣れていない人でもなんとかなるでしょう。
ただ、いくら簡単とはいえ裁判所へ行くとなると時間、金銭、心理的負担は内容証明の比ではないですし、なにより確実に勝てるかどうかわかりません。
また、相手が期間内に移行を望めば、通常の民事訴訟となってしまいます。
顧問弁護士がいるレベルの管理会社の場合、まず通常訴訟へと移行すると考えた方がいいでしょう。
最終的には強制執行だが
さてこうして希望通りの判決が出てももう一手間あるかもしれません。
判決に従って返還してくれればいいのですが、裁判自体を無視して欠席するような相手では、それでも素直に従ってくれないこともあります。
その場合は強制執行を申し立てることになります。
申し立ての際には差し押さえるべき相手の財産を特定しなければならないのですが、当然、自分で行うことになります。
通常は家賃の振込先に指定された口座を把握しているはずなので、この口座をターゲットにします。
ですが個人の大家ですと未だに手渡しという場合もあり、相手先の口座がまったくわからない場合もあるでしょう。
そうなるともう弁護士にお願いするしかありません。
いかがでしょう。
時間と手間もさることながら、費用もバカになりません。
下手をすれば、というかちょっとややこしいことになれば、マイナス収支になってしまいます。
最近ではその辺りをツイてくる大家や管理会社もあり、微妙な額の金額を敷金から引いてくるところもあります。
(実際に私も体験していますのでいつか記事にしてみたいです)
賃貸に限らず、お金を回収するのは本当にたいへんです。
長年の付き合いで、あまり質の良くない大家だとおもったら、あらかじめ最終手段まで行くことを考えて準備をしておく方がよいかもしれません。
(それこそ退居が決まったら賃料を払わないでおくという裏技も....あまりおすすめはできませんが)