再販制度の意義はすでに無くなっているのではないか
学生時代、私は書店でアルバイトをしていました。当時、アマゾンが日本に上陸していたかは定かではありませんが、今のようにメジャーな会社ではなかった時代のことです。
そのときとある学術書が欲しくなり発注をかけることにしました。
しかし待てど暮らせどなんの連絡もなく、1ヶ月ほど経って、絶版品切れという連絡が入りました。
仕方がないとあきらめていたのですが、それから1週間後、東京に遊びに行ったときのことです。
池袋のジュンク堂に立ち寄ってフラフラと棚を眺めていると、その書籍がならんでいるのです。
大喜びで購入したのは言うまでもありません。
そんなわけで、話題となっているこのニュースが気になります。
「Amazonでウチの本は売らない」 巨人に立ち向かう小規模出版社の“矜持” (1/4) - ITmedia ニュース
この出版社の理論が私にはよくわかりません。
学生向けのポイントサービスから再販制度の維持、アマゾンへの出荷停止などが、総論としてはよくわからない状態です。
彼らの真意としては、青色吐息の経営状態が多い小出版社にとって、現在の再販制度による自転車操業の仕組みが崩壊すると倒産するからだと推測しているので、そこでアマゾンを攻撃しているのかと考えています。
アマゾンというのは敵としてわかりやすい企業です。
アマゾンと似たようなことは楽天ブックスなど国内の他の大手オンライン書店でも行っています。
ポイントも大きくつくこともあれば、電子書籍にも取り組んでいます。
そんななかで常にアマゾンが槍玉にあげられるのは、外資であることと、新興勢力のシンボル的会社であることが大きいのではないでしょうか。
一方で他のオンライン書店では、楽天ブックスは日販、hontoは大日本印刷というように、国内の既存の業界が噛んでいることが大半ですので、ある意味、出版社にとっては仲間でもあります。
現実問題として、そもそも再販制度がその意義を確立できているのでしょうか。
書店で働いたことのある方ならおわかりでしょうが、冒頭であげた例のように、発注した本が1ヶ月以上連絡がない上に、結局、手に入らないということは、そうめずらしくはありません。
私のときはたまたますぐに別の書店で見つかるという運が良かっただけで、たいていの場合はそれで手に入らずに、待つ時間だけを消費し終わってしまうのです。
現在の再販制度を前提とした流通システムに瑕疵と不足があることは明白で、それがもう十年以上は続いています。
ちなみに、日本書籍協会の再販制度について、そのメリットについての説明があります。
しかし、一部の大型書店を除けば、書店の店頭に並ぶ書籍は膨大な発行数のうちのごく僅かで、それもほとんどの書籍は店頭に並ぶ期間はそう長くはありません。
再販制度はむしろ流通を阻害している要因のひとつではないかと思われます。
逆にこの再販制度の理念をもっとも実現化しているのが、ネット書店です。一般書店では店頭にすら並ばない本もリストに並び、ほとんどの本が全国津々浦々に、きわめて低コストで届きます。
その最大手がアマゾンということは皮肉なことです。
もちろんアマゾンが流通を支配するようになれば、それはそれで愉しくない未来が待っているでしょう。
ですが上記の出版社が、本を必要な人に確実に届けるシステムを確立するよりも、むしろ自己の利益を優先するならば、アマゾンに対する抗議はその正当性を失うようにおもいます。