原油価格の下落にまつわるふたつの思惑と今後
ここのところの経済的トピックとして、止まらない原油安というのがクローズアップされています。
逆オイルショックとまで言われてしまい、世界の相場の不安定さに大きな影響を与えている元凶と考えられています。
その原油安の理由ですが、異なる思惑というか、やや陰謀論めいた理由があげられています。
シェールつぶし? それともロシアへの制裁?
まずは中東やロシアなどの産油国によるアメリカのシェールオイルつぶしという説です。
産油国にとってシェールオイルは脅威であり、その採算割れを狙って価格を下げているというもの。
もうひとつがアメリカやサウジアラビアのロシアに対する制裁です。
原油の輸出が大きな位置を占めているロシアに対し、原油価格の下落で経済的に締め付けを行うというものです。
これは裏表で、どちらにしても両者が損する展開であり、骨を切らせて肉を経つような、我慢比べの状態です。
ここまで価格が下がろうともOPEC(石油輸出国機構)は原油の減産に踏み込んでいません。
これまで原油価格をコントロールしてきた、OPECが今回はどうして今回は減産をして価格の下落を防ごうとしないのかという疑念が、こうした思惑を生んでいるようです。
サウジアラビアの思惑
この推測で鍵を握るのが、現在OPECで減産に反対する最右翼となっているサウジアラビアの動向です。
世界でも最大級の石油の埋蔵量と生産量を誇るサウジアラビアにとって、ここのところのシェールの伸びは、黙認できないものといえます。
その一方でアメリカとサウジはシリアの反政府組織を支援していますが、同じく石油大国のロシアはシリアの政府と親密であり、それに対して牽制をしたいのではないかと。
というわけで、同じ事象から、片方はアメリカのシェールオイルつぶしが狙いとなり、もう片方がロシアへの制裁という異なる結論へと導かれていると考えられます。
個人的には原油価格の下落は、世界経済の減速不安と元からのオイルのだぶつきが要因だと考えています。
ただ当初は上記のどちらの思惑もあったのだとはおもいます。
それが肉を切らせて骨をどころか、こちらの骨も断たれる状態になりかけており、特にロシアの状況はかなり厳しいものとなってしまっているようにおもえます。
今後の原油価格は?
留まるところを知らない下落ですが、それでも心理的にはそろそろ落ち着くのではないかという観測もあります。
ここのところ原油ETFの下落幅と売買高の増加が、そろそろセリング・クライマックスなのではないかという見方が出ています。
とはいえOPECが減産を見送っている以上、世界的なだぶつきは解消されず、まだしばらく楽観視はできないかもしれません。