人口減少が必ずしも全国の賃貸が借り手市場にならない可能性
最近、すっかり復活した持ち家vs賃貸の不毛な争いですが、今後の日本の人口減少が賃貸市場において、借り手に有利になる可能性がよく論じられています。
(2)将来推計人口でみる50年後の日本|平成24年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府
未来の予測、それも十年二十年以上の予測など、予期せぬ要素が多すぎてほとんど不可能だとおもうのですが、このまま日本の体質が変わらないまま進んだ場合、人口減少は避けられない未来であるのはほぼ間違いないはずです。
そのため家屋の余剰が増加し借り手市場になるため、賃貸の方が有利になるというものです。
ただ、以前に空き家問題でも似たようなことを書いたのですが、人口減少がこの通りに進んだとして、賃貸市場への影響も予想どおりに行くかどうかは疑問があります。
ひとつは日本の風土が与える影響です。
降水量が多く、高温多湿の日本において、どうしても建築物の寿命は短くなります。
木造住宅など、定期的にメンテナンスをすればかなり長くもつのですが、そうした手入れが行われている住宅は決して多いわけではありません。
意識の程度もあるでしょうし、そもそも経済的な事情もあるでしょう。
今後、居住するのには危険になったり、解体される住まいは増えるのではないかとおもわれます。
それでも全国トータルでみれば住居の余剰が増える方が多いでしょう。
しかしどこでもいいというのならばともかく、利便性のよい土地、たとえば大都市圏に出やすい駅の近くなどは相変わらず需要が供給を下回る可能性は少なそうです。
さらに、住民の希薄化と税収の減少により、これまでのように全国津々浦々にまで行政サービスを届かせることができなくなるならば、政策として人口集中をという意見も散見されるようになりました。
そうなれば全体の人口は減っても、首都圏や地方の都市近郊に今以上に人口が集中し、賃料はむしろ上昇してしまう可能性もあります。
賃貸も地域格差が広がっていくという未来です。
もっとも現実にこの通りになるかといえば、20年30年という未来ではわかりません。
人口の減少は止まらないかもしれませんが、技術や社会の変化で必ずしも都市部に人口を集中させなくても、インフラ構築に多大な予算を必要としなくなる予測もあります。
ネットでの診療、交通の自動化、ロボットの普及などなど、郊外でもあまり変わらずに暮らせるようになるかもしれません。
そもそも人口の集中はメリットもありますが、防災面でのリスクにもなりますし、国土保全の観点からもあまり無人の地域が増えるのは好ましくないですから、できることならほどほどの密度で広く住めるのでしたら、そちらを推進するのではないかとおもわれます。